尿路上皮がん
にょうろじょうひがん
尿路上皮がんとは、腎盂,尿管,膀胱,尿道に存在する尿路上皮から発生する悪性腫瘍です。発生部位によって、腎盂癌、尿管癌、膀胱癌、尿道癌に分類される。尿路上皮癌の約90%は膀胱癌であり、上部尿路上皮癌(腎盂・尿管癌)は約10%を占める。
疫学・病因
60歳以降の高齢者に多い傾向があり、女性より男性に多い。喫煙は尿路上皮癌の最大のリスクファクターと考えられている。
尿路上皮癌の症状
血尿、頻尿、腰背部痛など。
診断への検査
尿検査(尿細胞診)、超音波検査、尿路内視鏡検査、CT検査
確定診断のためには、病理組織診断を必要とし、経尿道的膀胱腫瘍切除術などの腫瘍組織採取を必要とすることがあります。
尿路上皮癌の病期
病期とは癌の進行度の診断で、治療方針の決定に重要な情報となります。内視鏡手術による病理組織診断と画像検査(CT、MRI、PET-CT、骨シンチなど)の結果で、がんの広がりを調べます。
筋層非浸潤性尿路上皮癌(病期0期・Ⅰ期)
尿路上皮がんが上皮(粘膜)や粘膜下層にとどまり、筋層に浸潤していない状態。
筋層浸潤性尿路上皮癌(病期Ⅱ期・Ⅲ期)
尿路上皮がんが筋層に浸潤した状態。
筋層浸潤性尿路上皮癌(病期Ⅱ期・Ⅲ期)
尿路上皮がんが筋層に浸潤した状態。
転移性尿路上皮癌(病期Ⅳ期)
尿路上皮がんが骨や内臓臓器に転移した状態。
治療
①膀胱癌
筋層非浸潤性膀胱癌(病期0期・Ⅰ期)
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)が標準治療であり、術後の再発リスクに応じて、抗がん剤またはBCGの膀胱内注入療法を追加する場合があります。
筋層浸潤性膀胱癌(病期Ⅱ期・Ⅲ期)
膀胱全摘除術と骨盤内リンパ節郭清術が標準治療となります。男性の場合は前立腺、女性の場合は子宮も合併切除します。膀胱全摘除術後には尿路変向術(回腸導管、回腸新膀胱、尿管皮膚瘻)を行います。
治療効果を上げるため、基本的には術前に抗がん化学療法を行ってから手術を行います。さらに術後病理検査結果から再発リスクを評価して、術後補助療法(化学療法もしくは免疫療法)を行う場合もあります。
転移性膀胱癌(病期Ⅳ期)
全身薬物療法を行う必要があります。複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法、免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)が行われることになります。痛みや出血を軽減させる目的で放射線療法を行うことがあります。
②上部尿路上皮癌
筋層非浸潤性・筋層浸潤性上部尿路上皮癌(病期0期・Ⅰ期・Ⅱ期・Ⅲ期)
腎臓、尿管を全て取り除く腎尿管全摘除術を行うことを標準治療としています。手術前に筋層浸潤性上部尿路上皮癌と判断した場合には、腎機能や全身状態を考慮して術前化学療法を行う場合もあります。また、術後病理検査結果から再発リスクを評価して、術後補助療法(化学療法もしくは免疫療法)を行う場合もあります。
転移性上部尿路上皮癌(病期Ⅳ期)
全身薬物療法を行う必要があります。複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法、免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)が行われることになります。痛みや出血を軽減させる目的で放射線療法を行うことがあります。
一般的な診断と標準治療について記述いたしましたが、病状は患者さん個人個人で異なります。患者さんにとって最も良い治療法を決定できるようにサポート致します。