腎がん
じんがん
腎がん(腎細胞がん)とは?
腎がんはその名の通り、腎臓にできる悪性腫瘍(がん)であり、そのほとんどが腎細胞がんと呼ばれるものです。10万人に10人程度の割合で発症するとされます。腎がんは成人のがんの約2~3%を占め、男性が腎がんになる割合は女性の約2倍です。腎がん発症の危険因子として、肥満、高血圧、タバコ(喫煙歴)などが挙げられます。また、von Hippel-Lindau(VHL)病やBirt-Hogg-Dube(BHD)症候群など遺伝性疾患を持つ患者さん、腎不全で透析を受けている患者さんは発症リスクが高いとされます。
症状
腎がんの初期症状はあまりありません。近年では無症状で発見される腎がん患者全体の70%以上で、検診や他の病気の画像検査で指摘されることが多いとされます。ただしそれ以外にも、血尿、横腹のしこり、痛みなどで検査を受け、発見される事もあります。多くの人は50~70歳で発症します。
診断
腎がんの疑いがある場合には、超音波検査、CT検査、場合によってはMRI検査を行って診断します。CT検査では、腫瘍の大きさ、血管に入りこんでいるか、リンパ節や他の臓器(肺、肝臓、骨など)に転移していないかを調べます。MRI検査では、下大静脈など隣接する組織にがんが広がっているかどうかがわかります。さらには手術にあたっては、腎臓の血管の数や走行が重要ですので、CT検査の画像を詳細な3次元の立体構造として再構築し、手術に臨みます。
治療
腎がんが転移していない場合
がんが腎臓の外に転移していなければ、腎臓の手術を行う事で治る見込みは十分にあります。当院では、腫瘍が小さい場合(4cm未満、ただし条件によっては7cm未満)には、多くの場合、腫瘍部分と隣接する正常組織だけを取り除き、腎臓の残りの部分は残す手術(腎部分切除術)を選択します。腫瘍が大きい場合や、小さくても部分切除が困難と判断した場合は腎臓全体を摘出する手術を選択します(根治的腎摘除術)。
手術について
腎部分切除および根治的腎摘除術のいずれも、ほとんどの場合、手術支援ロボットを用いて行います。当院は2022年現在、da Vinci Xi、da Vinci Si、hinotoriの合計3台が稼働しています。大きな腫瘍や病期が進行している場合には開腹手術による拡大手術を行います。それぞれの患者さんに応じて、がんの根治性と腎臓の機能温存などを考慮し、ベストと考えられる術式を決定しています。
腎がんが転移している場合
遠隔転移(腎がんが離れた部位に転移する)の場所は、肺が最も多いとされますが、その他様々な臓器に生じ得ます。腎がんの診断時に見つかるとは限らず、発見された腎がんをすべて手術で取り除いた数年後にはじめて出現することもあります。かつて腎がんは抗がん剤・放射線が効きにくいとされてきましたが、現在では多種多様な薬剤が腎がんに対して適応となっています。
薬物療法について
がんの増殖に重要な役割を果たしている血管内皮増殖因子を主なターゲットとした「チロシンキナーゼ阻害薬」、がんの発生に関連する細胞内シグナルの伝達経路をターゲットとした「mTOR阻害薬」、がん細胞に対する自己免疫によってがんを攻撃させる事を目的とした「免疫チェックポイント阻害薬」などが開発され、転移性腎がんの治療成績は著明に改善しています。以下は、転移を有する腎がんに対して使用可能な薬剤の一覧です。患者さんの状態や、がん自体の状況(進行リスク)に応じて、2種類の併用治療を行う場合もあります。
チロシンキナーゼ阻害剤:
スニチニブ(商品名スーテント)、ソラフェニブ(商品名ネクサバール)、アキシチニブ(商品名インライタ)、パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)、カボザンチニブ(商品名カボメティクス)
mTOR阻害剤:
エベロリムス(商品名アフィニトール)、テムシロリムス(商品名トーリセル)
免疫チェックポイント阻害薬:
ニボルマブ(商品名オプジーボ)、イピリムマブ(商品名ヤーボイ)、ペンブロリズマブ(商品名キートルーダ)、アベルマブ(商品名バベンチオ)