尿路性器感染症
にょうろせいきかんせんしょう
尿路性器感染症とは?
尿路性器感染症とは、尿路である腎臓・尿管・膀胱・尿道、そして生殖器である前立腺・精巣・精巣上体・卵巣・卵管・膣に発症する感染症のことです。泌尿器科では尿路と男性生殖器の感染症を診療しますが、原因となる菌を同定し必要があれば外科的に治療介入します。
慢性前立腺炎
慢性前立腺炎は、細菌が関与する慢性細菌性前立腺炎と、細菌が関与しない慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群に分類されます。両者を区別するためには、前立腺をマッサージした後の尿を用いた細菌検査が必要です。当院では尿を用いて遺伝子検査も行っており、一般細菌のだけではなく培養できない細菌の同定にも努めています。
検査
感染症診療では血液検査により炎症の程度を判定し、尿培養検査や血液培養検査などの培養検査により原因となる菌を同定します。またCTなどの画像検査により感染巣を特定します。
逆行性尿路検査
尿路が狭窄もしくは閉塞して細菌尿が溜まっている場合には、膀胱鏡を尿道から挿入して細径カテーテルなどを用いて細菌尿を採取します。
慢性前立腺炎の検査
前立腺マッサージをした後の尿検体を用いてPCR検査を行います。一般細菌培養検査では同定できない細菌と、それら細菌の抗菌薬に対する耐性遺伝子も検索します。
診断
膀胱炎/腎盂腎炎
膀胱や腎臓に細菌が感染して発症します。糖尿病や免疫が抑制される基礎疾患を持っていると発症リスクが高くなります。
気腫性腎盂腎炎
糖尿病のように組織内グルコース濃度が高い腎臓にガス産生菌が感染すると発症します。腎臓内でガスが著明に産生されるため診断は容易ですが、致死率は10-20%と高い壊死性尿路感染症です。
慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群
慢性前立腺炎は、前立腺マッサージ後の尿から検出される細菌の有無により分類されます。細菌が検出されない慢性前立腺炎は、慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群とも言われ原因は明かではありません。
フルニエ壊疽
陰嚢を含む会陰部や肛門周囲に発症する壊死性筋膜炎です。急速に進行する致死率が高い疾患です。
治療
感染症診療は各種培養検体を採取して、適切な抗菌薬を投与する事が基本です。尿路感染症は尿路閉塞が原因となる場合があり、以下の外科的手技を用いて治療介入できる事が泌尿器科の特徴です。
尿管ステント留置
膀胱鏡を用いて尿道から膀胱・尿管を経由して腎臓まで細径の管(ステント)を挿入し、腎の細菌尿をドレナージします。
腎ろう造設
尿管ステントが留置できない場合には経皮的にカテーテルを腎に穿刺して、腎の細菌尿をドレナージします。
開放手術
気腫性腎盂腎炎やフルニエ壊疽では、開放手術により感染組織を摘除したりドレナージします。
慢性前立腺炎の治療
症状に応じて各種治療薬を内服しますが、当院ではPCR検査にて細菌を同定できた場合には適切な抗菌薬を投与します。