前立腺がん
ぜんりつせんがん
前立腺癌とは?
前立腺は男性のみに存在し、膀胱の直下で尿道を取り囲むように位置するクルミ大程度の臓器です。前立腺液(精液の成分の一部)を分泌する働きがあります。
前立腺に発生した悪性腫瘍を前立腺癌といいます。高齢者に好発し、国立がん研究センターの2018年度の統計では男性の臓器別罹患数1位であり、男性における最も頻度の高い癌といえます。
発生の決定的因子は不明ですが、加齢や前立腺癌の家族歴はリスク因子とされています。近年では先天的な遺伝子異常の関与についても解明されてきています。
検査について
早期の前立腺癌では自覚症状がほとんどなく、多くは検診等で前立腺癌特異抗原(PSA)の上昇を指摘され精査を受け診断されます。中には癌が進行し、排尿症状(尿閉、血尿等)や転移による痛み等の症状で受診されるケースもありますが、いずれにしても前立腺癌特有の症状はなく、生検や画像検査による診断が必要となります。主な検査は下記の通りです。
- PSA測定(採血)
一般的にPSAが4を超えていれば精査を行います。 - MRI
前立腺癌の画像診断に最も有用な検査であり、当院及び近隣関連施設にて高精度なMRI検査(multiparametricMRI)を行っています。→ MRI-TRUS fusion biopsy - 直腸診
直腸越しに前立腺を指で触って腫瘍がないか診察します。 - 前立腺生検
当院では、MRIと前立腺生検時のエコーを融合することで前立腺癌が疑われる部位の組織を採取するMRI-TRUSfusion biopsyを行っています。→FBページへのリンク - その他画像検査(CT/骨シンチ検査等)
局所での進行具合や、転移がないかを調べます。
治療について
前立腺癌の治療法は多岐に渡り、癌の進行度や患者さんの希望により異なります。早期の癌では手術や放射線による根治治療が可能です。主な治療法は下記の通りです。
①手術療法(前立腺全摘除術)
主に早期の癌に対し根治治療として行います。内部を貫く尿道ごと前立腺を丸々摘除し、残った尿道を縫い合わせて尿路を再建します。当院では低侵襲な「ロボット支援下前立腺全摘除術(RARP)」を行っています。
術後早期にはほとんどの方に尿失禁や勃起障害が起こりますが、RARPでは従来の手術に比べ回復が早いと言われています。当院では hinotori 及び daVinciXi、daVinciSiの3台の手術支援ロボットを使用しています。
②放射線療法
主に早期癌に対し根治治療として行います。前立腺に線源カプセルを埋め込む小線源療法や、体の外から照射する外照射療法等があり、リスクによって照射方法が選択されます。手術のように尿失禁は起きにくいものの、後々放射線障害(血尿や血便、疼痛等)が発生するリスクはあります。
小線源療法をご検討中の方はこちら(県立広島病院)
進行癌に対する症状緩和目的に行うこともあります。
③PSA監視療法
非常にリスクの低い前立腺癌に対し、即時の治療を行わず観察する方法です。定期的にPSA検査、MRI検査や前立腺生検をすることで、必要時には根治治療を検討します。
④薬物療法
ホルモン療法
前立腺癌は男性ホルモン(アンドロゲン)依存性に増殖することから、薬でアンドロゲンを除去して癌の進行を抑える治療法です。進行癌の進行抑制目的に用いられる他、早期癌であっても手術や放射線治療を受ける体力のない高齢者等で選択される場合もあります。
化学療法(抗癌剤療法)
ホルモン療法開始後、耐性ができて効かなくなった前立腺癌に用いられます。近年では、高リスク癌に対してホルモン療法に先行して用いられる場合もあります。
PARP阻害剤
近年では癌の遺伝子診断が発展しており、前立腺癌でも特定の遺伝子変異を伴った癌の存在が判明しています。進行癌では、遺伝子診断によりPARP阻害剤という種類の薬剤が適応となる場合があります。